ドラムセットの椅子・スローンのベストな高さとは?
さて前回は「セッティングのときに最低限抑えるべきは椅子の高さ」ということの導入だけ書いて終わりにしてしまったので、今回はより詳細に考えていこうと思います。
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椅子の高さはなぜ大切?
そもそも何で椅子の高さが大事なのでしょうか?
ちょっとまた音楽の話から遠くなりますが……陸上でも、バスケットボールでもサッカーでも、二足歩行で行うスポーツって、まず要となるのが「両足で地面を蹴り上げる動き」なのではないかと思うのです。
なぜなら、スポーツの動作は足の裏で地面を蹴り上げるというモーションを体の全体に伝えたうえで、とても高度な動きをしているからなのです。
実はギターやベースなど立って弾く楽器もスポーツ程ではないと思いますがこの動作の仕組みを使っています。
ではドラミングはどうでしょうか?
もちろんドラミングも、バスドラムやハイハットのフットペダルを蹴り上げる動作は大切ですが……それだけではないのです。
そう、それはドラミングが座ってする動作だからです。
それなので、ドラミングを考える際には「両足で地面を蹴り上げる動き」と「椅子の上での腰の動き」の計3点を基本として考えることが大切だと思います。
ドラム椅子の足はどのくらい広げた方がいいの?
そして、ようやく本題です。
まず椅子をセッティングするときは「椅子の足」を広げますね。
この「椅子の足」なんですけど、私が気を付けていることは「広げ過ぎない」ということでしょうか。
なんでかというと特に最近の椅子って本当に作りがしっかりしているので「椅子の足」を広げ過ぎると「椅子が安定しすぎる」のです。
「別に安定していた方がいいんじゃないの?」と思う方もいるかもしれませんが、私的には「ちょっとだけ不安定な要素」もあえて残すようにしています。(この理由についてはこの後書きます)
それなので「椅子の足」はまぁ無難に45度程度の開き具合でいいと思います。
椅子の高さによるメリット・デメリット
そして、次は椅子の高さです。
これについてはドラマーの体系が、それぞれ違うので正解は1つには決められません。
いろんなプロドラマーのセッティングを見てみると結構腰が沈むくらいに低くしている方も見受けられます。
椅子を低くするメリットとしては、やはり「バスドラムの音をしっかりと出しやすい」という点ではないでしょうか。
具体的には、BPM80~120くらいのハードロック系の8ビートとか、バスドラムを4分音符で踏み続けるいわゆる「ディスコ・ビート」とかを演奏するときは椅子を低くした方が演奏しやすいと思います。
あとはバスドラムの「音色」を繊細にコントロールすることが求められるジャズなんかも椅子は低めがいいと思います。
「じゃぁ椅子を高めにセッティングしたらこういうジャンルの曲は演奏できないの?」ということになりますが、結論を言えば「演奏できます。でもちょっと工夫が必要です」ということになりますね。
つまり、椅子を低くするということは地面までの距離が近くなるので地面を踏みつけやすくなりますので、わりとどっしりとしたバスドラムの音は鳴らしやすいですね。
タムタムのセッティングが難しくなることも
ただし、注意すべき点もあります。
まずは「レンタル(備え付け)のドラムを使う場合、タムタムのセッティングが難しくなる」という点ですね。
これは結構ドラマーあるある的な話だと思うのですが、レンタルのドラムのタムタムはほぼ100%バスドラムに刺さっているホルダーについています。
椅子を低くセッティングするときって、これに結構手こずったりして、タムタムの傾斜をいつもより多めにしちゃったりして、その結果、うまくタムタムを叩けないというジレンマに陥り……という負のスパイラルにハマったなんて経験はないでしょうか。
それなのでこの点は頭に入れておくといいと思いますね。
腰への負担
それともう一点「速いテンポの2バス連打はやはり辛い」という点です。
ドラミングの基本は「余分な力を抜く」ことであると、近年いろんなところで言われていますが(ちなみに、「脱力」という表現は誤解を招くと思っているので、あえて「余分な力を抜く」と表記します)、やはり、バスドラムを速いテンポでたくさん踏み続けると腰に負担はかかります。
特に2バスをドコドコ……とBPM130以上くらいで鳴らすときは椅子を低くセッティングしていると「腰のバランスがとりにくいな」という状態になります。
そしてこの状態で何時間かドラムを叩いていると腰に負担がかかってしまいます。
演奏やプレイスタイルに合った高さ
というわけで椅子を低くすることの注意点は大きくこの2つかなと思うのですが「じゃぁ高くすればいいの?」というと今度は足の裏と地面との距離が遠くなるので、さっき書きましたがバスドラムをしっかりと鳴らすのにちょっとした工夫が必要になってきます(この工夫についてはまた別の機会に……)。
なので、自分が演奏する曲のスタイルを考えて、その時に応じた椅子の高さを選んでいただければいいかなと思います。
ちなみに私の場合は、基本的に2バス(ツインペダル)を速いスピードでドコドコとならすことが多いので「高め」にしています。
具体的には椅子に腰かけたときに、自分の太ももと床が平行になっていたらもう少し椅子を高くします。
私は基本的に備え付けのドラムを叩く機会ばかりなので、自分の中にこの「基準」を作ったことで、セッティングの時間が短くなり、一度セッティングした状態を途中で直すこともほぼなくなりました。
最後に
というわけで、2回に渡りセッティングのお話を書いてきましたが、最初は「シェア」の話から始まり「ドラマーはいかにその場の楽器を自分の物のように使えるようにするか?」というテーマで書いてきましたが「結局楽器じゃなくて椅子の話じゃん!」ということになってしまいました。
椅子だけ考えてもこれだけの文字数になるくらいセッティングって奥が深いなぁ点……と、自分で書いていてあらためて思いました。
今回の記事が何かのお役に立てばうれしく思います。
ではでは。
ご観覧ありがとうございました。
ライタープロフィール
ドラマー
Hazime
ドラム歴20年。
プログレッシヴ・ロックバンドのドラマーやってます。
「セレクトーン」という音楽教室にてドラム講師もやっております。
物理学や心理学をからめてドラムの楽しさを広めていくことをモットーとしています。
ウェブサイト:http://www.drum-lesson.net